「一年後の住まい」2作品紹介

日々寒暖の気候を繰り返す中、次第に春の終わりを感じる様になりました。 今回は、昨年の春から夏にかけて竣工した、作品集に載っていない2棟の住まいを紹介させていただきます。

最初のお宅ですが、名古屋市から南信州に「夏の涼」を求めて移って来られた方のお住まいです。
名古屋も高層ビルが立ち並び、消費される電気エネルギーやいかなる物かと想像され、ますます温暖化に急激に向かっていると思われます。
夏の灼熱たるや信州人にとって、とても耐えられるものではありません。お施主さん曰く 「駅前に高層ビルが出来てから一層暑くなりました。」との事でした。 依頼を受けた私共は、まず最適な土地探しから始めました。
信州でも風景を形成してきた、農林業を主体とした牧歌的な風景が、次第に減少しつつありますが、まだまだ暮らすには最適な土地柄かと思います。
多種多様な土地を見ていただきながら、南アルプスを目前に控え、周囲には農地が残る高台の敷地に決定しました。


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適度に近所に人家が隣接し、大変暮らし易そうな土地柄です。
お住まいですが、コンパクトな「別荘感覚の住まい」であり、勾配なりの内部空間が、そのまま片流れ屋根の形状となっています。
居室の廻りをグルリと幅広の広縁が取り囲み、建具を引き込めば「ワンルーム化」する空間構成です。玄関ホールには、「トップライト」を、勾配天井の上部には、「ハイサイドライト」をセットし、「光のスパイス」を加えてあります。地場産の桧・杉材によって組まれた構造体アラワシの内部空間は、床面積以上に「空間の豊かさ」を表してくれます



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軒の出はあくまでも深く、夏の日差しと風雨より住まいを守ってくれます。
信州に移り住み、ひと夏を過ごされましたが、新鮮な自然風が抜け行く住まいは、大変快適で、空調機器は必要なさそうです。
冬期は、幅広の広縁がサンルーム化し、陽だまりの中で明るく快適に
過ごされています。

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南信州では農産物の直売所が大変盛況で、農家と直結した土の付いた新鮮な農産物が安価に入手する事が出来ます。このような住まいで、新鮮な農業生産物を食して暮らす・・・・・まさしく循環型社会の中での暮らしであり、大量消費循環社会の都会生活からみれば、つつましいけれど、一番グルメであり、ある意味最高に贅沢な暮らしとも思えるのです。

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さて二軒目のお宅ですが、南信州の旧家の改築工事で、築百余年の民家を解体しての改築工事でした。
最初に現地を見させていただき、築百余年の民家を目前にし、「何とか再生手法をとれないかしらん」とあれこれ思いを巡らしていました。
造りとしては、典型的な南信州養蚕型の総2階、切妻仕様の民家でした。


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ご当主のお話によれば、当時移築された民家との事ですが、当時は移築も盛んに行われ、竣工の3分の1程度が移築であったと思われます

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それなりの老朽化は当然の事としても、現況の配置が桁行方向に南北であるという点が頭を悩ませました。
当然現在のお住まいでは、採光条件も悪く、再生するにしても90度家屋を振らなければ快適な居住性は得られないのです。 近年 鳶職の方も減少し家を持ち上げ振るという作業が特殊化し、単価的にもかなり高額になってしまうんです。
多方面から再生と改築を寸前迄検討し、メリットの高い改築へと進むことになりました。
改築後の住まいは、総2階建てに和室の平屋部がドッキングした切妻形式の典型的な多世帯住宅となりました。


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当然、地域の木工職の方々による、地域材の桧・赤松・杉材により組み上げられています。
内部空間は、屋根勾配なりの吹き抜け空間であり、居間の吹き抜けを介して、1・2階の空間を繋げてあります。 吹抜を介した薪ストーブの全室暖房により、おばあちゃんからお孫さん迄、暖を取りながら皆さん元気で暮らしていらっしゃいます。

洋瓦を使用した住まいの経験が数少なく、周囲が日本瓦葺きの集落の中に上手く溶け込むか不安がありましたが、お施主の選ばれた淡いピンク色の左官仕上げの外壁と共に、長く引き継がれた松の木立の残る旧家の庭園に上手く同化しています。 又、下屋付切妻2階建の通常の形式でしたので、図面が完成しても「余りにも凡庸ではないかな?」とも思いましたが、竣工時の姿は、木質系のバルコニー・破風・サッシュ廻りの開口枠等と、左官材とのマッチングもよく、良きデザインになったのではと思っています。
無理をして変化のある形態をつくらなくても、素直に端正にまとめるのが良いという想いを再認識した次第です。

「3代住み継がれて、初めて文化が生まれる」と言われる住まいですが、末永くお孫さんの世代以上に住み継がれる事を願っています。





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